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静かな涙

「帰ってこなかったんだよ」

大正15年生まれ、88歳のおじいちゃまAさんが娘さん2人と来館され、慰霊碑に花束を供えてくださいました。

昭和19年、青年会の役員をしていた立場で、お隣のおうちの娘さんを“開拓の花嫁”として満州に送り出したのですが、その人は結局、帰ってこなかったのだそうです。
その話を娘さんたちが聞いたのはつい昨年のこと。
「この辺りの人たちは満州に行かなかったの?」と何気なく聞いたら、実は・・・とこの話をされたそうです。

かける言葉が見つかりませんでした。

国策を進めるために、誰が考えたのか、村々にその推進役をうまく作っていったのです。
青年会(青年団)もその一翼を担いました。
昭和12年、日本青年団が日本中の幹部200人を集めて満州視察旅行に行き、それに参加したという人が6月に来館されました。帰国した人たちはもちろんその後推進役として各地域でその役割を担い、自ら開拓団に参加した人もいたわけです。
Aさんは召集されましたが内地の配属で、たまたまお盆の帰省中に終戦を迎えました。

戦後70年もお隣の娘さんのことがずっと心にひっかかっていたのです。
個人が背負うことではない、個人の責任ではない、と言いたい・・・。
Aさんが殺したわけではないのです。でも・・・。

ことば少なに語り、静かに涙を流されていました。
説明をされる娘さんの目からも涙があふれていました。

せめて記念館で、背負ってきた荷物を少しおろしてほしいと思いました。
そして、その荷物を、これからは私たちが一緒に背負っていきましょう。
過ちを二度と繰り返さないために。
by kinen330 | 2014-08-20 18:27

満蒙開拓平和記念館の非公式ブログ。記念館にまつわるよもやま話を綴ります。


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