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あの時のあの味

「自分がどこで生まれたのか、確認しに来ました。」

Iさん73歳。お父さんが教師で青少年義勇軍を送り出していました。
「記念館はずっと気になっていたけれど、来づらかった」そうです。

結局お父さんも教師として満州へ渡ります。
持参された資料には「郭爾羅斯前旗」といういかにも内蒙古的な地名が記載されていました。
記念館の入植図で探すと、ありました。今も当時も吉林省。ここがIさんが生まれた場所でした。

ソ連侵攻後は、お父さんが班長となり日本人150人くらいを引き連れて逃避行。行くさきざきで寝る場所の確保や食糧の調達などしながら移動していったといいます。
終戦の時3歳だったIさんはまったく記憶がないそうです。

「満州でのことは全然覚えていませんか」と尋ねたら
「いやぁ、笑い話ですけどね」といいながら・・・

終戦翌年の昭和21年7月、日本への引揚げ船に乗ります。
その船の中で“塩汁(しおじる)”なるものが配給になりました。要するに、少し塩味がついているスープです。その中にさつまいもの蔓が2~3キレ浮いていました。それが美味しくて美味しくて、大人の分まで「ちょうだい、ちょうだい」といって食べたのだそうです。

それまでの生活のひもじさが偲ばれます。

「さつまいもの蔓をお店でたまに見かけると今でも食べたくなります」
あの時のあの味。Iさんの唯一の満州の記憶です。
by kinen330 | 2015-05-06 18:53

満蒙開拓平和記念館の非公式ブログ。記念館にまつわるよもやま話を綴ります。


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