父として

「この子を一度も抱けなかったから」

おじさんが青少年義勇軍で渡満したという女性が来館されました。

3年間の訓練を終えた後、義勇隊開拓団へ移行し、結婚して奥様を迎えます。
娘さんが生まれましたが、その時にはすでに召集されて団を離れていました。
その後のソ連侵攻で、残されていた婦女子たちは逃避行。
途中で幼い娘さんは亡くなりました。

おじさんは2年前に90歳で亡くなりました。
亡くなる前に、その娘さんの位牌を一緒に棺に入れてほしい、
自分の胸の上に置いてほしい、と頼んだそうです。
「この子を一度も抱けなかったから」と。

開拓団に妻子を残して召集された男たち。
その後の悲劇を聞いて、どんなに無念だったことでしょう。
自分を責めたことでしょう。

長い人生を終え、
一度も抱くことができなかった娘さんと一緒に
おじさんは旅立っていきました。
愛おしい我が子のぬくもりを抱きしめながら。
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by kinen330 | 2016-08-27 18:33

満蒙開拓平和記念館の非公式ブログ。記念館にまつわるよもやま話を綴ります。


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