消していた記憶

「記憶を消していたんです。
 消さないと生きていけなかったから。
 覚えていたら生きていけなかったから。」

昭和18年、Hさんは小学校に上がる春に満州へ渡りました。
父親は教師。母親は助産婦。
伯母さんが行った開拓団で助産婦がいなくて困っているという話があり
一家で行くことになりました。

そして、3年生の夏。ソ連侵攻。

Hさんは満州の記憶を消していましたが
50歳くらいになって体験談を書いてほしいと頼まれ
母親から当時の話を聞きました。
すると、消していた記憶が鮮やかによみがえってきました。

逃げ込んだコーリャン畑で、1メートル横を走っていた同級生が撃たれたこと。
川に流される子供の声。
「おかーちゃーん、たすけてー」と叫ぶ声。

40年間、消していた記憶でした。

人は、生きるために記憶を消し、またよみがえらせることもできる。
強烈な体験をした人にはあることなのかもしれません。
よみがえらせた時に、ともに向き合い支え合う人がそばにいてくれただろうか。
満州から帰ってきた人々の戦後に、思いを致します。






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by kinen330 | 2018-02-01 18:23

満蒙開拓平和記念館の非公式ブログ。記念館にまつわるよもやま話を綴ります。


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