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心の中のどろどろしたもの

「逃避行の途中、暴徒に見つからないように泣き止まない赤ちゃんの首を絞める役を頼まれた
民ちゃんは、その後、罪悪感にさいなまれて団を離れていったんですよ。」
民ちゃんはそのまま日本に帰ってくることはありませんでした。

ときどき記念館に来ては、来館者に展示案内をしてくださる元開拓団のKさん、86歳。
現地住民からの襲撃や3週間もの逃避行、収容所生活で6割以上が犠牲となった開拓団で、
ご自身も残留孤児となり、昭和33年、集団引揚げ最後の年にようやく帰国しました。
自分の体験だけでなく、あの人、この人、同級生の〇〇くん、〇〇さんの話・・・。
どれもこれもが悲惨な話で「不都合な史実」です。

Kさんの開拓団が入植した場所はもともと抗日感情の激しい地域で、
農地も家屋も二束三文で現地の人から買い上げたものでした。
なぜ自分たちがそのようなやり方でそこに入植しなければならなかったのか。
時に中国語で書かれた文献も辿りながら、ひとり悶々と研究してきました。
子どもながらに「五族協和」といいながらあからさまな差別が存在していたことを見てきました。
収容所生活では極限に置かれた人間の非情や狂気も見てきました。
戦後は「団の恥をさらすな」と団の幹部たちから口封じを受けていました。

「心の中にどろどろしたものがあるんです。」
そう自覚しながら、歴史を伝える生き証人として記念館に来てくれます。
その小さな肩にどれほどのものを背負っているのだろうか。
心の中のどろどろしたものが洗い流される時は来るのだろうか。

どうか、Kさんの話に耳を傾けてほしい。
あなたの時間を少し分けてほしい。
展示案内をする後ろ姿を祈る思いで見ています。




by kinen330 | 2019-04-14 19:51

満蒙開拓平和記念館の非公式ブログ。記念館にまつわるよもやま話を綴ります。


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