人気ブログランキング |

5人のおじいちゃまへ

今日の仕事は5人のおじいちゃまへお手紙を書くことでした。

埼玉県の元開拓団のWさん、83歳。
当時のことを思い出すと涙が溢れて筆が進まなかった、と必死で書いた自伝を以前送ってくださり、先週お仲間4人と来てくださいました。
Wさんの自伝『父よ妹よ』より。
ー 「お兄ちゃん寒い」といったので二人で一緒に使っていた毛布を妹の身体に巻き付けてしっかりとかけてやったが、ぼくはその後すっかり眠ってしまったので、寝返りなどして毛布は妹から離れて妹に寒い思いをさせてしまったかも知れない。ー
妹さんは「リンゴが食べたい」と言って、数日後に亡くなりました。

神奈川県のSさん、80歳。
長野県出身の元開拓団。先週、故郷の村の人たちが来館されるということで、その前日にお電話をくださいました。
Sさんの体験記より。
逃避行の5日目、追い込まれた人々は「生き組」「死に組」に分けられ、子どもや若い女性、病人などはここで自決させるしかないという判断に至りました。お姉さんは死のまぎわに言いました。「あたいは鈴蘭の花が好きだから鈴蘭の花を見たらお線香をあげて。」 建物に手榴弾を投げ入れ、火を放つという壮絶な自決現場。「死に組」だったSさんは反射的に外へ出て逃げたといいます。逃げるSさんの足を誰かの手が「まるで地獄から助けをよぶ手のよう」に引き止めたそうです。

東京在住のOさん、84歳。
ソ連侵攻後の満州で、民間人が遭遇した惨劇の中でも最も犠牲者が多かったといわれている「葛根廟事件」の生存者のお一人です。
現在の内モンゴル自治区、旧興安総省のチベット寺院葛根廟付近で、避難民がソ連の戦車部隊の襲撃に遭い1,000人以上が亡くなりました。逃げ惑う人々を戦車がひき殺し、大草原が血で染まったともいわれる凄惨な事件です。
その生存者の証言から真相を辿るドキュメンタリー映画『葛根廟事件の証言』が12月21日から東京の池袋シネマ・ロサで上映されるというお知らせをいただきました。

東京在住のNさん、92歳。
当地、長野県下伊那郡のご出身です。学校で青少年義勇軍の候補生6人のうちの一人として事前訓練などに参加していましたが、結局友だちにすすめて二人が渡満。大変な苦難の末に無事帰ってきたそうですが、それをずっと気にされていたそうです。
行った人にも、行かなかった人にも、「満州」という歴史は刻まれています。

東京在住のMさん、89歳。
高校の教員をしながら長年満蒙開拓について地道に研究、調査をされてきた人です。
満蒙開拓の加害性にも早くから言及され、著作物のテーマには大陸の花嫁、朝鮮半島からの開拓団・義勇軍、義勇軍を送出した学校教育の責任など、歴史の陰の部分に光を当ててこられました。どこに立脚して歴史を見るのか、大切なことを教わっています。


それぞれの方にお手紙をしたためました。
私の大切な仕事です。



by kinen330 | 2019-12-08 20:05

満蒙開拓平和記念館の非公式ブログ。記念館にまつわるよもやま話を綴ります。


by kinen330
プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る