「橋」という漢字
2021年 03月 19日
「橋」という漢字は
木を書いて
ノを書いて
大を書いて
口を書いて
四角く囲んだ中にもう一つ口を書く
兄と二人きりで引揚げてきた12歳の少女は
「働くからここに置いてください」と頼んで
叔母の知人の家に住み込みで働かせてもらった。
出ていけと言われないように。それだけだった。
市街地に続く急な坂道を往復して闇市で米を仕入れ、
橋を渡って精米所に運んでいく。
二斗(約30キロ)を背中にかついだ。
橋の欄干には橋の名前が書いてあった。
行きは漢字。帰りはひらがな。
毎日往復しながら「橋」という漢字を覚えた。
木を書いて
ノを書いて
・・・
開拓団では父親が大けがをし、病弱の兄の代わりに働いた。
学校へはろくに行けていない。
引揚げてきてからは、学校へ「行かずにすんだ」。
「学校へ行っていたら、周りについていけなかったから助かったの。」
木を書いて
ノを書いて
・・・
「橋」という漢字は、そのようにできている。
by kinen330
| 2021-03-19 19:47