マントウ(饅頭)
2021年 05月 06日
ときどき記念館に来て、問わず語りに満州の話をしてくださるKさん。
先日は、いよいよ引き揚げることになって、コロ島へ移動する途中の話。
集団の中に栄養失調の若い母親と4歳くらいの男の子がいた。
歩けなくなった母親を、どこかのおじさんがおぶって歩いていたが
チャムスまで来てとうとう母親は力尽き、虫の息となる。
「息子は生きて連れて帰る」と約束し
母親とは、そこで別れた。
新京まで来て、足止め。
集団は収容所に入る。
出発のめどは立たず
体力のない人々に伝染病が襲いかかる。
ある日、おじさんは男の子と二人で外に出て行き
そして一人で帰ってきた。
マントウをいくつか買ってきて、そっと分けてくれた。
みんな分かっていたけれど、黙って食べた。
問わず語りに紡ぎだされる満州。
この貴い時間を噛みしめている。
by kinen330
| 2021-05-06 18:26