ひらがな
2022年 07月 05日
Eさんは小学校に通うのが楽しくて仕方がなかった。
1年生ではカタカナを習う。
2年生で、ひらがなだ。
「ひらがなって、やわらかくて流れるように綺麗でしょう。
2年生になってひらがなを習うのが楽しみだったの。」
しかし、家族は満州へ渡ることに。
父と母、兄と妹弟の6人家族。
Eさんだけ断固反対。
ふるさとの村を離れたくない。
「お前一人になってもいいんか?」
説き伏せられ、昭和16年6月、
Eさんは2年生の途中でふるさとを離れた。
ひらがなの勉強は、開拓団の学校でも続いたはず。
でも、Eさんは、何かを奪われたままなのだ。
7歳の少女が奪われたもの。
それは、現地召集されて亡くなった父、
栄養失調で亡くなった妹、
中国人に預けたまま再会が叶わなかった弟、
そして、自ら選んだ人生を生きる、ということなのかもしれない。
by kinen330
| 2022-07-05 18:55