被告席
2022年 10月 30日
「服を脱いでシャワー室に入れられ、
濡れた裸のまま 男たちに髪の毛を丸刈りにされ、
投げつけられた服を下着もないまま着る。
窓に映った姿を見ても どれが自分か分からなかった。」
1944年、ハンガリー領になったルーマニア西部の町から
アウシュビッツへ収容されたヘディさん94歳のお話を
オンライン講座でお聴きしました。
その町に住んでいた3万人のユダヤ人のうち
生還できたのは2千人だったそうです。
ヘディさんも両親や友だちを亡くしました。
「50年間、話すことができなかった。」
あの恐怖、あの屈辱、怒りや恨み、悲しみや苦しみを心の奥底に沈めたまま。
2015年、ドイツで元ナチ親衛隊 オスカー・グレーニングの裁判が行われました。
ヘディさんはその裁判に出廷し、証人の一人として自分の体験を証言しました。
「ドイツへ行きたくなかったが、声を奪われた人々、
亡くなった人たちのために行こうと思った。」
この史実にしっかりと向き合うドイツの若い世代の人々とも出会うことができました。
この体験についてヘディさんは、
「亡き両親のお墓に花を供えられたような思い。
ドイツへの憎しみから解放された。肩の荷が下りた」と語りました。
被告席に座ったグレーニングは当時93歳。
ドイツは今でもナチの犯罪を問い続けています。
では、被害と加害が絡み合う「満州」の犠牲に対して
被告席に座るのは誰なのでしょうか。
空席のまま77年。
せめて、この歴史に向き合い続け、当事者のお話を聴くことが、
私たちの責任だと思います。
#
by kinen330
| 2022-10-30 13:40