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スミレの刺繍


「日本のお土産にと思って、作って送ったんです。
 あの方たちは、その後、どうされているのでしょう。」

ゴールデンウイーク、観光地は賑わっているようですが、
記念館も家族連れや県外からのお客様が来てくださっています。

そんな中、窓口からそっと声をかけてこられる女性。
手には、スミレの花を刺繍したキルティングの手作りの小さな袋を持っておられます。

1981年から残留孤児訪日調査が開始されました。
第一次訪日団は47名。
 左胸に黒いあざが数個ある。
 埼玉か山梨出身で5人兄弟の末子。
 新京の難民収容所で軍人の仲介でSさんにもらわれた。
 ・・・・
ボランティアの通訳を介し、繰り広げられる面接調査の末、
肉親判明者30名。
涙の再会をメディアは大いに取り上げました。
そんな人たちを横目に見ながら、待っても待っても肉親が現れない人もいました。

白いキルティングの表地に、裏地には鮮やかな花柄の布があてられ、
周りを緑の布でふちどり、丁寧にまつってあります。
少し頭をもたげたふたつの花は
中心からピンク、白、水色、紺へと広がり
柔らかいカーブを描いた黄緑の茎に、根元で広がる3枚の緑の葉。
お帰りなさい。苦労されましたね。
あの方たちに思いを寄せながらひと針、ひと針。
人数分、作って送ったのだそうです。

その人のやさしさに胸が熱くなり、そして、
この袋を手にした人たちのその後のさまざまな人生を想像して
胸が痛くなるのでした。

# by kinen330 | 2023-05-05 18:54

10年の日々は

今日は外も館内もひんやりとした空気に包まれていた。

朝からハナモモ観光の行き帰りのグループやご夫婦連れがご来館。
午前中はシニア大学OB会の皆さんの展示ガイドをし、
午後には中学校の先生方の下見対応。
その間に資料の貸出しや講演依頼のメール対応をしたり、
郵便物の準備をする。

「どこかお昼ご飯を食べられる所、あります?」
というおばさまたちに阿智村グルメマップを広げ、
「兄貴が義勇軍で撫順炭鉱にいた」という話に
え!撫順に義勇軍の訓練所があった?と入植図や『満洲開拓史』を確認。
「満州で苦労して帰ってきて、帰ってからも苦労して・・・」と
感想を述べあっているグループに聞き耳を立て、
「ここにこんな資料館があることをもっとPRするべきだ」
と力強く窓口で言っていかれたおじさまに励まされ、頭を下げる。
閉館時間ぎりぎりには、大正15年生まれのお父様の車椅子を押して男性が飛び込んできた。

いろいろな人々が行き交う。
歴史に出会う。
そして、事務所は今日も賑やかだ。
私はもう少し残業。
いつもの一日が過ぎていく。

# by kinen330 | 2023-04-24 17:33

生命の輝き

「引揚げの旅は素晴らしい旅だった」
加藤登紀子さんのお母様は、ハルビンから葫蘆島までのその苛酷な移動を
このように表現したという。
明日をも知れない状況の中
「今という瞬間を精一杯生きているのよ。
 精一杯、今日も生きたね」
ということを皆で共有しながら葫蘆島へ向かった日々。
生涯の中でたぐいまれな大切な旅だった、と。

王希奇氏が描いた「一九四六」の人々は
そのような旅を続けようやく葫蘆島に辿り着いた人々だ。
年寄りを背負い、子どもに乳を飲ませながらも、歩いている。
生きようと、生きて祖国へ帰ろうと歩いているのだ。
その"人間の生命の輝き”が、差し込む光ではなく、
自ら輝く「ホタルの光」として散りばめられている。

6日間の「一九四六」展が無事に終了した。
2,000人を超える来場者それぞれが、
あの引揚者たちの一員となってともに歩きながら
耳を傾け、語りかける。
記念館という空間の中で交わされる絵との対話。
それはやはり素晴らしい時間であり、素晴らしい旅であった。

ご来場いただいた皆さま
この展覧会を支えてくれた方々、仲間たちに
心からの感謝を。



# by kinen330 | 2023-03-26 19:42

「戦争はいけない」を問う

ー 戦争はいけないこと。
  それはいいと思うが、もしも日本が他国に攻められたら
  その「戦争はいけない」という姿勢はどうなるのか。
  おそらく「自分たちからの戦争」は起こさないという意味だと思うが、
  それにしても、ただただ「戦争はいけない」と主張しても、
  何の意味があるのか分からない。 ー

中学生からの質問だ。
大人たちが言う「戦争はいけない」は、欺瞞であり偽善なのではないかという
鋭い指摘だ。
平和学習の本質を問うものでもある。

私たちの国は今、攻められたらやり返す力を持とうとしている。
迎え撃つ力だけでなく、攻める力。
これって、「いけない戦争」をするということなのか。
それは許されるのか。

ただただ「戦争はいけない」と主張するだけでなく、
考えよう。意見を交わそう。
持つべき力は何なのか。
そのためには何をするべきなのか。


# by kinen330 | 2022-12-17 18:24

友音ちゃんのレポートから

「同じ人間同士が傷つけ合うのは なぜなんだろう」

もともと戦争に興味を持っていたという友音(ともね)ちゃんが
中学1年生の夏休みに調べ学習に選んだテーマが「満蒙開拓」でした。
図書館の司書さんに本を紹介してもらったり、記念館に来て調べたり、
1ヶ月かかってまとめたレポートは60ページもの大作。
論文なみに章立てになっており、最終ページには参考・引用文献もずらり。
地図や表や年表あり。かわいいイラストも散りばめられています。

この友音ちゃんレポートに出会ったのは昨年7月。
講演会の講師でお呼びいただいた会場のロビーに
主催者の公民館長さんが、地元の中学生の作品をぜひ見てほしいと
1ページずつコピーしてずらりと展示してくださっていました。
へ~~と読んでいくうちにしだいに引き込まれ、まだある、まだある・・・。
この分量と、この内容を中学1年生が!ととても感動しました。
ちょうど、子ども向けの図録のようなものを作りたいと思っていました。
これだ!
友音ちゃんとご家族に許可をいただき、補足や編集・構成などなど
出版社やデザイナーの方々とやりとりしながら1年以上かかりましたが
ようやく『友音ちゃんとたどる満蒙開拓の歴史』という冊子となって出版にいたりました。

11月26日、友音ちゃんと公民館長さんと一緒に出版会見を開きました。
新聞記者さんからのいろいろな質問に答える友音ちゃん。今は中学3年生。
満蒙開拓をテーマにしたきっかけは?との質問に
「もともと戦争に興味がありました」との答え。
さらに、どうして戦争に興味があったのか?との質問に
「同じ人間同士が傷つけ合うのは なぜなんだろう」と思っていたとの答え。
・・・たしかに。その通り。
どうして同じ人間同士が傷つけ合うのでしょうか。
戦争って、そういうことだよね。
隣で受け答えを聞きながら、やはり、友音ちゃんの中に平和への強い思いがあったこと、
それがあの60ページものレポートを書くエネルギーになったことに改めて感心しました。
そして、何より友音ちゃんが強調したのは「同世代の人たちにこの歴史を知ってほしい」という願いでした。

『友音ちゃんとたどる満蒙開拓の歴史』は
友音ちゃんの「なぜ? どうして?」を一緒に考えながら歴史をたどる内容となっています。
ぜひお買い求めください。
 ↓


# by kinen330 | 2022-11-30 18:38

満蒙開拓平和記念館の非公式ブログ。記念館にまつわるよもやま話を綴ります。


by kinen330